動画の自動化を進めていくと、必ずここに突き当たります。
ナレーションを合成音声にするかどうか。
先に結論を書きます。ショート動画は合成音声で構いません。10分のロング動画は、ご自身の声を入れてください。
理由は、機械の性能ではないんです。判断の材料は、もっと手前にあるんですよね。
分かれ目は「相手と会うかどうか」です
合成音声で回してよい商売と、そうでない商売があります。
分かれ目は一つだけ。動画を見た人と、あとで実際に会うかどうかですよね。
会わないなら、合成音声で問題ありません
たとえば、顔を出さずに情報を売る商売。
視聴者と会うことは永久にありません。だから合成音声で10分の動画を作って、どんどん投稿しても成立します。声が誰のものかを確かめる場面が来ないからです。
ずっと接点がないまま終わりますよね。だから合わなくていいんです。
会う商売だと、ここで壊れます
問題はこちらです。
お客さんと直接会う商売の場合、動画の声と、目の前にいる自分の声が別人になります。
めちゃくちゃ格好いいイケメンボイスで10分の動画を作る。それを見て来てくれた人の前に、自分が出ていく。
嘘つき、と言われますよね。
写真でも、同じことが起きています
これは声だけの話ではないんですよね。
僕の知り合いの歯科の先生で、こういう方がいました。
50歳を過ぎて、適度に太ってきて、髪も減ってきて、髭も剃らなくなった。その状態で、ウェブサイトには20代の全盛期の写真を載せ続けていたんです。しかも審美が専門で、女優さんも来るような医院です。
期待して予約を取った患者さんが、実際に出てきた本人を見て、そのまま帰られたことがあるそうです。本当の話です。
声で同じことが起きる、というだけなんですよ。
ショート動画は、なぜ合成音声でいいのか
念のため、線を引き直しておきます。
ショート動画でやっているのは呼び込みです。30秒で人柄を伝えるわけではありません。だから合成音声で構いません。
長さが変わると、役割も変わりますよね。会うか会わないか、それだけで判断してください。
数字でも、まだ人の声が勝っています
好みの話に聞こえるかもしれないので、調べた数字も置いておきます。
昨年の研究で、人の声と合成音声を16の項目で比べています。信頼感、好ましさ、伝わりやすさ。全項目で人の声が上回りました。
ただし、差は年々縮まっています
ここは正直に書きます。都合の悪いことも書いておかないとフェアではないですよね。
合成音声の処理はよくなっていて、評価の点数差は毎年迫ってきています。いずれ逆転するかもしれません。
ですから、これは永久の原則ではなく、今の判断です。今のところは長い動画では自分の声を入れたほうがいい。そういう言い方が正確だと思います。
自分の声を入れても、手間はほとんど増えません
ここで、面倒だと感じた方が多いと思います。
でも実際にやってみると、思ったほどではないんです。
カメラの前に座る必要はありません
まず、顔を映さなくていいです。画面はアニメーションで構いません。
やることは、渡された原稿を読むだけ。iPhoneのボイスメモで録れます。
何人かに試してもらいましたが、案外すんなりいきます。ビデオになると難しいけれど、音声だけならまあまあいける、という評判なんです。撮り直しが100回になった、という話も出ていません。
間と言い間違いは、自動で直ります
録ったあとの心配も要りません。
変に間が空いている。言い間違えている。そういう箇所は、いまはAIが自動で見つけて直します。話す速さの調整もできます。
そうなんです。読むところだけが人間の仕事で、あとは残らないんですよ。
週に10分から15分で足ります
どれくらい喋ればいいのか、という話もしておきます。
週に10分から15分、原稿を読む。それだけで、動画が2本から3本できる計算になります。
収録して、編集して、テロップを入れて、という作り方をしていた頃とは、かかる手間がまるで違います。ライトは何を使うか、カメラはどうするか、マイクは何がいいか。僕も昔はそういう講座までやっていましたが、あれは終わりました。
声だけは、まだ代わりがききません
画像は揃えられます。編集も、テロップも、投稿の予約も、機械が全部やってくれますよね。
そのうえで、声だけは自分で入れる。
機械に渡せないものが、一つだけ残っています。会う商売をしているなら、そこを渡してはいけません。
逆に言えば、渡さないのはそこだけでいいんです。
