「AIにも記憶機能がついてますよね?」
「だったらウチの情報も、使ってるうちに覚えてくれるんじゃないですか?」
最近のセミナーでよくいただく質問です。
気持ちはすごくわかります。
毎回同じ説明をするのは面倒ですし、覚えてくれるならそれに越したことはないですよね。
ところが、この「覚えてくれる」の中身が、僕たちが期待しているものとだいぶ違うんです。
今回はその話をしたいと思います。

先日の2日間の講座での出来事です。
参加者の中には、僕の講座をずっと受けてくださっている方と、今回初めてお越しの方が混ざっていました。
初日の終わりに皆さんからアンケートを取ります。
翌日、そのアンケートを「講座の受講者と、それ以外の方」に分けて比較した集計を、皆さんにお見せしたんです。
受講者の回答はこういう傾向、初めての方はこういう傾向、と横に並べたものです。
見せた途端に出てくるのが、これ、どうやって出してんのって話です。
僕はこう言いました。
「だからChatGPTでは絶対にできないんですよ。『これ分けて集計してください』『え、なんですかそれ、リスト出してください』ってなるでしょ」
スマホのChatGPTに「受講者とそれ以外で分けて」と頼んでも、集計は出てきません。
アンケートの回答は渡せても、誰が受講者なのかを判定するための名簿を、アプリのほうが持っていないからです。
だから「リストを出してください」と聞き返してくるんです。
じゃあ僕の環境はどう違うのか。
僕のパソコンのハードディスクには受講者のリストが入っています。
それから、普段の連絡に使っているChatWorkの閲覧権限もAIに渡してあります。
なので、アンケートの名前を見た瞬間に、この人は受講者、この人は今回初めての方、とAIが自分で判断できるんです。
「受講者とそれ以外で分けて」と言えば、名簿を自分で探して、自分で照合して、集計まで出してきます。
僕が名簿を作ってあげたわけではありません。
最初から手の届く場所に置いてあるだけなんです。
これが、同じ「AI」でも結果がまるっきり変わる理由です。
だから業務用のAIでないと、そういうことがゼロから教え直しになるんです。毎回毎回。
今日は受講者はこの人とこの人で、と説明してから集計してもらう。
翌週また同じことを聞かれたら、また最初から説明する。
これ、新しく入った人に毎朝同じ引き継ぎをしているのと同じですよね。
しんどいですよね。
慣れてきた頃に忘れられるので、いつまでたっても新人さんのままなんです。
「いやいや島田さん、今のAIにはメモリ機能があるでしょ」
はい、あります。
ChatGPTにもClaudeにもGeminiにも、会話の内容を覚えておく機能がついています。
使っていると前に話した内容を踏まえて返してくれることもあるので、覚えてくれてる感じはします。
ただですね。
そこのメモリって向こうが勝手に圧縮した情報なんで、リストみたいなものはあんまり持ってないんですよ。「なんかスクールやってるなぁ」ぐらいなんですよ。
何を残すかを決めているのはAIの側で、こちらではありません。
向こうなりの要約なので、「島田さんは経営の講座をやっている人」ぐらいの印象が残ります。
その講座の受講者が誰と誰で、いつから来てくださっていて、どんな相談をしてきたか。
そういう一行一行の情報は、印象になった時点で抜け落ちています。
名簿を丸ごと覚えておく、という使い方には最初から向いていないんです。
つまりメモリ機能は「その人がどんな人か」を覚える仕組みであって、「その人が持っているデータ」を預かる仕組みではないということです。
会社の人で例えるとわかりやすいです。
飲み会で「あの人、確か何かスクールやってるって言ってたな」と覚えている程度の記憶。
それがメモリ機能です。
その人に「うちの受講者と、それ以外で分けて集計しといて」と頼んでも、「え、受講者って誰ですか」と返ってくるに決まっています。
記憶の中に名簿がないんですから当然ですよね。
一方で、同じ会社で名簿のファイルを見られて、日頃のやり取りも見られる社員さんなら、「あの件、分けといて」で通じます。
本人が特別に優秀だからではなく、資料を渡してもらってるのか、勘で推測してるのかの違いです。
なので細かい情報は、ハードディスクに出しておかないと入れておけないんです。
名簿はファイルにして保存しておきます。
お客さんとのやり取りは、AIが読める場所に置いておきます。
過去の相談記録も同じです。
そこまでやって初めて、AIは「知っている人」になります。
継続性のある人として雇うことができるんですよ。「お前知ってるやろ、それやっとけよ」ってできるんですよ。これが性能の差なんですよ。AIそのもののモデルの性能じゃなくて、どの情報を使えるかっていう性能差があるんで。
ここ、誤解されやすいので念を押しておきます。
どのAIが賢いか、という話をしているのではありません。
同じモデルでも、普段の仕事の情報を持っているAIと、ないAIでは、返ってくるものがまったく違うという話です。
ChatGPTの中身が劣っているわけでもなく、業務用が特別に頭がいいわけでもありません。
僕の環境のAIが集計を出せたのは、受講者のリストとChatWorkが手の届くところにあったからです。
それだけなんです。
だからもし今、「メモリ機能があるからうちの情報も覚えてくれるはず」と思っておられるなら、一度試してみてください。
「うちのお客さんを、今年取引があった人とそれ以外で分けて」と頼んでみるんです。
「え、そのリストください」と返ってくるのがオチです。
AIが悪いわけでも、使い方が下手なわけでもなく、参考にするべきデータを渡してないだけです。
渡すものを揃えるところから、業務用のAIは始まります。
自社の名簿や記録をAIの手の届く場所に置く、その環境づくりから一緒にやりたい方は、ai.msup.biz のAI導入サポートをご覧ください。何を渡せばどこまで任せられるかは会社ごとに違いますので、まずは今の状態の相談だけでも構いません。
