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AIに社内マニュアルや社内wikiの整備を任せ始めた、経営者・情シス兼務の方へ。

「この人たちに合わせて」と頼んだら、AIは全部ひらがなにしてきた

社内向けのノウハウwikiをAIに任せて「読み手のレベルに合わせて」と頼んだら、全文がひらがなで返ってきました。読みやすくしてほしいという指示が、なぜ表記の幼児化になってしまうのか。改修前と今の実物を並べて見えてきた、AIへの頼み方の落とし穴をお話しします。

AIロボットが差し出した原稿がひらがなだらけで、島田が驚いている様子のイラスト

「わかりやすくして」。AIに文章を任せるとき、つい言ってしまう一言ですよね。私もよく使います。ところが、この一言が曲者なんです。先日、その落とし穴に、きれいにはまりました。

「レベルに合わせて」と頼んだら、全部ひらがなになった

私が世話人をしている「ClaudeCode友の会」という集まりがあります。会員向けに、AI活用のノウハウをためた社内wiki(情報のデータベース)を作っていて、この整備もAIに任せています。

先日、その中身を「もっと読みやすく、この人たちのレベルに合わせて」と頼みました。そうしたら、返ってきた原稿が、いきなり全部ひらがなだったんです。見出しも本文も、まるごとひらがな。

どうやらAI(最上位モデルのFable 5です)は、私のそれまでのやり取りを見て、「この人たちは漢字を読めない」と判断したらしいんですよね。よかれと思って、めいっぱい開いてきた。いや、幼稚園児じゃないんですよ、と。「違う、子どもじゃなくて大人だから」と言い直したら、今度はちゃんと漢字に戻してくれました。結果としては、そこから本当に読みやすくなったんですけどね。

笑い話のようですが、これはAIに文書を任せる人なら、誰でも踏みうる地雷だと思うんです。

なぜ「合わせて」で、表記まで下がるのか

面白いのは、AIはむしろ指示に忠実だった、ということなんですよね。

「読み手のレベルに合わせて」。この一語を、AIは律儀に受け取ります。ところが「レベル」という言葉には、いくつもの軸が束になって入っているんです。語彙の難しさ、表記(漢字かひらがなか)、一文の長さ、構成の複雑さ、前提知識の量。ぜんぶ「レベル」で括られてしまう。

で、「レベルを下げて」と一語で頼むと、AIはこの束をまとめて下げにきます。どれか一つではなく、全部いっぺんに。その一番わかりやすくて極端な下げ方が、全部ひらがな、だったわけです。

つまり悪いのはAIの読解力ではなく、こちらの頼み方なんですよね。どの軸を下げてほしいのかを言わずに、まとめて「レベル」と言ってしまった。だから、まとめて下がってきた。

「初心者向け」と「子ども向け」は、違います

ここが今日の肝です。

「初心者向けにする」「専門用語を噛み砕く」。この判断そのものは、正しいんです。読み手がAIを触り始めたばかりなら、むずかしい言葉を減らすのは当たり前ですよね。

ところが、言葉を噛み砕くことと、表記の水準を下げることは、まったく別の軸なんです。大人の初心者は、漢字が読めないわけじゃない。ただ「REST API」みたいな言葉を、まだ知らないだけです。だったら、やることは「ひらがなにする」じゃなくて「その言葉に説明を足す」なんですよね。

語彙をやさしくするのはいい。でも表記まで幼児化すると、読み手をバカにした資料になってしまう。しかも、ひらがなばかりの文章って、実は逆に読みにくいんです。単語の切れ目が分からなくなりますからね。よかれと思った幼児化が、読みやすさを下げてしまう。皮肉な話です。

正しい直し方は、wikiの実物が教えてくれた

では、結局どう直したのか。同じwikiの、改修前の版と今の版を並べると、答えがはっきり見えます。

改修前の版には、専門用語がそのまま並んでいました。たとえば「WordPress自動投稿(REST API連携)」という項目。でも、REST APIが何なのかの説明は、どこにもありません。用語の解説は、ゼロでした。知っている人にしか読めない、素っ気ない資料だったんです。

今の版は、この専門用語を消していません。「REST API」は「REST API」のまま残っています。その代わり、項目の下に「用語メモ」を付けました。「REST API=外部のプログラムからWordPressを操作するための窓口。これ経由でAIが記事を投稿できます」。「ターミナル」なら「文字でパソコンに命令する黒い画面のアプリです」。こんな調子で、用語メモは今では31語分あります。

つまり、正解は「ひらがなにする」ではなく、「言葉は残して、横に一言の説明を足す」だったんですよね。言葉のレベルは下げていない。読み手の足場だけを増やした。これが、大人の初心者に対する敬意のある直し方だと思うんです。

頼み方のコツも、この実物から見えてきます。軸を分けて渡す、これだけです。

  • 語彙: 専門用語は残す。初めて出てくる言葉にだけ、一言の説明を添える。
  • 表記: 漢字・カタカナは大人の標準のまま。むやみにひらがなに開かない。
  • 構成: 結論を先に。1項目1論点で。長い一文は切る。

ちなみに、こういう「決め事」は、その都度チャットに残していけば、それ自体がマニュアルになっていきます。立派なルールブックを作らなくても、相談して決め事を積み重ねるだけでいい。AIを入れている職場なら、そのやり取りを後からまとめてもらえますからね。直し方のルールが、勝手にたまっていくわけです。

まとめ:軸を分けて頼めば、AIは下げすぎない

読みやすさは、語彙と構成で作るものです。むずかしい言葉を噛み砕き、話の順番を整える。ここまではどんどんやっていい。でも、表記は大人の標準を守る。ここを混ぜないことです。

「わかりやすく」と一語で頼むと、AIは軸をまとめて下げてきます。だから、下げたい軸だけを名指しで渡す。「言葉はやさしく、でも表記は大人のまま」。それだけで、幼稚園児向けの原稿は返ってこなくなりますよ。

AIは、こちらが思っている以上に、言葉どおりに動きます。だからこそ、雑に頼むと雑に、丁寧に切り分けて頼むと丁寧に応えてくれる。全部ひらがなの原稿は、AIの失敗じゃなくて、私の頼み方への正直な返事だったんですよね。

AI活用の実例

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