加工前と加工後の写真を並べて見比べたら、無いはずのものが描き足されていました。今回は、AIに写真を綺麗にしてもらうときに、どこで線を引くかというお話です。僕自身もブログに載せる写真はAIで綺麗にしてもらっているので、えらそうに言える立場ではありません。ただ、これを知らずに使い続けると、まずいことになる場面があるんです。
加工後の写真に、無いはずのものが描かれていました
「加工前」と「加工後」を並べてもらいました
「最近、写真がうまく撮れなくて。ChatGPTに綺麗にしてもらっているんですが、これでいいんでしょうか」
先日、そんな相談を受けました。AI活用の勉強会でご一緒している会員さんです。
話だけ聞いてもわからないので、その場で写真を用意してもらいました。自分で撮ったものと、AIに綺麗にしてもらったもの。その二枚を並べて、一緒に見比べていきました。
一枚目は、光の入り方が悪くて、少し暗い印象の写真でした。二枚目は、同じところを撮ったはずなのに、明るく整った写真になっています。パッと見た感じでは、いいじゃないですか、と言いたくなる仕上がりなんですよね。
ところが、じっくり見比べていくうちに、様子がおかしくなっていきました。
書いた覚えのない線と、無いはずの継ぎ目
まず気づいたのは、写真の中に文字のようなものが入っていたことです。よく見ると、ペンで書き込んだような線が浮かんでいます。本人も「これは入れていない」と驚いていました。
さらに確認していくと、本来は無いはずの継ぎ目が描き足されていました。実際にはそんなものが存在しない場所です。AIが「ここにも継ぎ目があるはずだ」と判断して、勝手に描き加えてしまったんですね。
それだけではありません。別の部材が、いつの間にか隣の部材に置き換わっている箇所もありました。細部を見ればすぐわかりますが、パッと見た印象では気づかないところです。
これ、僕が指摘するまで本人も気づいていませんでした。自分で撮って、自分で加工した写真です。それでも、並べて見比べないとわからない。そういう変わり方をするんですね。
色味も、価格の表示まで変わっていました
見比べていくと、色味そのものが変わっていることにも気づきました。同じものを撮ったはずなのに、加工後の写真では色がわずかに違って見えるんです。
そして、これが一番まずいところなんですが、価格の表示まで変わっている写真がありました。
念のため申し上げますが、狙ってそうしたわけではありません。AIに「綺麗にしてください」とお願いしただけなんです。明るさを整えてほしいと頼んだつもりが、書いてある数字まで書き換えられていた。そういう話です。
書き足された線や継ぎ目なら、まだ見た目の問題で済みます。ですが、値段の表示が変わっているとなると、これは見た目の話ではありませんよね。そのまま出していたら、お客様に間違った値段を伝えることになっていたわけです。
なぜAIは、勝手に足したり引いたりするのか
AIは「本来こう見えるはず」で埋めてきます
そうなんです。AIの画像加工は、写っている情報を整えるだけの作業ではありません。
AIは「本来ここはこう見えるはずだ」という推測で、写っていない部分まで補って描いてきます。継ぎ目が途中で切れていれば、続きがあるはずだと考えて描く。線がぼやけていれば、はっきりした線だったはずだと考えて描き直す。悪気があってやっているのではなくて、空いているところを埋めるのが仕事だと思っているわけです。
掃除をお願いしたつもりが、模様替えまでされていた。そんな感じに近いと思います。頼んだ範囲を勝手に広げてくるんですよね。
で、なぜそうなるのかというと、AIは写真を「記録」として扱っていないからです。僕たちは写真を、その日その場所にあったものの記録だと思っています。ところがAIのほうは、たくさんの画像を見てきた経験から「こういう場面ならこう写るのが自然だ」というお手本を持っていて、それに近づける作業をしているんです。だから、記録として正しいかどうかより、お手本として自然かどうかが優先されます。撮った本人しか知らないはずの部分を、平気で作ってくるのはそのせいです。
これ、文章を書かせたときに起こることと同じ構造です。知らないことを聞かれても、AIはそれらしい答えで埋めてきますよね。黙って「わかりません」と言ってくれたら助かるのに、埋めてしまう。写真でも、同じことが絵で起きているだけの話なんです。
消してはいけないものまで、消えてしまう
もう一つ知っておいてほしいのが、逆方向の失敗です。
汚れやノイズに見えるものを、AIは邪魔だと判断して消します。ところが現物のほうでは、それがあるから本物らしく見える、という部分があるんです。今回も見比べながら、加工で消してしまうと、かえって不自然になる部分があるという話になりました。作り手からすれば、そこは消してほしくないところなんですよね。むしろ、そこが写っているから仕事の中身が伝わる、という部分だったりします。そういう事情はAIには見えていません。
つまり、足すのも引くのも、AIが自分で判断しているということです。こちらは一言も指示していません。そしてその判断の基準は、綺麗に見えるかどうかであって、事実かどうかではないんです。
ここが肝心なところですよね。AIは、写真を綺麗にする道具であって、事実を守る道具ではありません。事実を守るのは、それを使う側の仕事です。
ブログはこのままでいい。買う前の写真には一線を引く
ブログ程度なら、AIで綺麗にして構いません
ここまで並べると、AI加工が怖くなったかもしれません。もう何枚か出してしまった、という方もいると思います。慌てて全部下げなくて大丈夫です。でも、結論は変わりません。ブログに載せる程度の写真であれば、AIで綺麗にしてもらって構いません。ここは僕の判断として、はっきりお伝えしておきます。
理由は単純で、そこまで細かく見る人が、まずいないからです。僕自身、ブログに使う網戸の写真をAIで綺麗にしてもらったことがあります。言われなければ気づかれません。
要は、これまでPhotoshopでやっていた明るさや色味の補正を、AIに代わってもらうという使い方ですね。自分で細かい調整をするより、そのほうが早く済むことも多いです。その範囲で使う分には、心配は要りません。
買う前に見せる写真は、話が別です
一線を引くのは、お客様が買うかどうかを決める前に見せる写真です。
ここで加工後の写真だけを見せてしまうと、実物との差にがっかりされます。しかも厄介なのは、その差をこちらが作ったわけではないということです。AIが勝手に描いたものなので、後から聞かれても説明のしようがないんですよね。
がっかりされるから駄目だ、という話ではありません。事実と違う情報をもとに、お客様に判断していただくわけにはいかない。そういうことです。判断の材料をお渡しする場面で、その材料が本物でないというのは、商売として通らないと思うんです。
一言添えて了承を取る。そして現物を写真に近づける
じゃあ、具体的にどう落とし込みますかって話ですよね。うちがお伝えしているのは、この二つです。
- 写真を見せるときに「こういう感じの写真です。光の角度によって、見え方が変わることがあります」と一言添えて、了承をもらってから見せる
- 実際の仕上がりのほうを、写真の印象に近づける。同じ色になるように現物を丁寧に仕上げる
一言添えるのは、毎回やってください。今日は急いでいるから省こう、をやると、そういう日に限って問題になります。やることは一言だけですから、続けられる対策だと思います。
そしてもう一つの、現物を写真に近づけるほう。実はこちらが本筋です。見せ方をどう工夫するかより、現物をきちんと合わせにいく。その姿勢がないと、一言添えたところで、言い訳を先に用意しただけになってしまいます。
これで行き違いは減ります。ゼロにはなりません。写真と現物が完全に一致することなんて、AIを使わなくてもありませんから。それでも、事前に一言あったかどうかで、話のこじれ方はずいぶん変わるんです。
線を引く場所は、そんなに難しくありません。ブログに載せるのか、買う前のお客様に見せるのか。それだけです。僕は、この一本だけ決めておけば、あとは自由に使っていいと思っています。
AI Team by MeisterSupport では、こうした写真加工や画像生成の使い方についても、現場のご相談をお受けしています。今日の話は、どこかで読んできた理屈ではなく、実際に加工前後の写真を並べて見比べたところから出てきたものです。「これって加工していいのか」と迷ったときは、気軽に声をかけてください。LINEかお問い合わせフォームからどうぞ。
